木の実たち

シャクナゲ

ヤマボウシ

白い花びらに見える総苞片(そうほうへん)を坊主頭と頭巾に見立てて「山法師」と名付けられた。実は食べられ、その果肉は甘く食用になり、ジャムなどに用いられる。ヤマボウシには種類が複数ある。ハナミズキと外見がそっくりだが、ヤマボウシは日本原産で、ハナミズキはアメリカ原産の外来種。花の苞の先端が尖っているヤマボウシに対してハナミズキの花の苞は丸みがかっている。

ノグルミ

ノグルミ

見た目はトゲトゲしているが意外と柔らかく、逆さにして振ると平たいタネが出てくる。クルミの仲間だが、食べられる種子はできない。山野に自生するクルミの意。ノブノキやドクグルミという別名があるが、これはこの木の葉や樹皮を叩いて魚毒とし、川に流して浮いた魚を採って食べたことに由来。ある地域では、「サルノクシ」や「キツネノカミスキ」とも呼ばれ、トゲトゲした形状から櫛のつく名前で呼ばれることがある。

タチバナモドキ

タチバナモドキ/ピラカンサ

日本では3種のピラカンサが多く栽培されており、そのうちの1種がタチバナモドキ。(3種の総称がピラカンサ)。オレンジ色の実を付ける。実の様子が、ミカンの仲間であるタチバナに似てるからと命名された。毒があると言われる果実であるが、毒があるのは実ったばかりの時期(秋)であり、時間の経過とともに消えていく。鳥の好物である。果実は秋から春にかけて実る。

ホオノキ

朴の木という名前は、その大きな葉を使って食べ物を包んだことから、「包(ホウ)」の転化が由来とも言われている。花、葉、実のすべてが大型。花は同じモクレン科のタイサンボクに似ており、大きな葉「朴葉(ほおば)」はトチノキに似ている。その葉は殺菌・抗菌作用があり、食材を包んで使われることもある。葉のみならず、樹皮にも薬用の効果があり、鎮痛剤などの漢方薬の原料とされることもある。これを「厚朴(こうぼく)」と呼ぶが、中国産と区別するために日本産を「和厚朴」と呼ぶ。実は目立つ赤色をしているが、熟すと次第に重くなって下に落ちる。

スギ

日本固有種。木の中ではスギが日本一と言われるほど、長寿で樹高が高くなる木。さらに、日本で一番多く植えられている木もスギである。日本では古くから使われ、多く植林されてきた。日本のほとんどのスギは人工的に植えられたもので、天然のスギは稀で屋久島や富山県立山などにある。スギという名の由来には諸説あるが、幹がまっすぐに伸びることから「直木(スクキ)」と呼ばれ、これがスギに変わったという説、同様に上へ伸び進むことから「進む木」、これが転じてスギになったという説が根強い。また、スギが神社仏閣に多いのは、天に向かってまっすぐに伸びる様が、神の依り代と考えられたためとされる。

ヤマユリ

日本原産のユリで神奈川県の県花でもある。名前の由来は、山に自生しているから。球根にはこんにゃくにも多く含まれるグルコマンナンが多量に含まれていて、苦味がなく、食用になる。また、生薬として咳止めや解熱にも使われる。ヤマユリは、地理的変異と個体変異が大きい品種であり、同じヤマユリでも外観が相違していることがある。強い芳香を放つことから「ユリの王様」とも呼ばれる。成長には時間がとてもかかり、種が発芽するまでに2年、最初の花をつけるまでに5年かかるとされる。

蝋梅

蝋梅は梅の花が咲くころに香りの良い黄色い花を咲かせること、花が蝋を塗ったような質感であることから「梅」に例えられて蝋梅と名が付いたと言われている。開花時期は冬の12月~2月頃。花やツボミは抗菌作用があることから薬にも利用されていて、「蝋梅油」として火傷や鎮痛剤、解熱剤、咳止め薬として使われることもある。しかし、開花後になる実の種子には強い有毒成分が含まれているため、くれぐれも口にしないように。

ホオズキ

盆花の代表的な花の一つ。ふっくらとした形と炎のような色味から、ご先祖様や死者を導く提灯に見立てられ、仏壇や精霊棚に飾る風習がある。名前の由来には諸説あり、『赤く色づいた実から「頬(ほほ)」を連想するため』『赤い実が「火々(ほほ)」に「染まる(つき)」ように見えるため』『中身を取り出した果実を鳴らして遊ぶ子供たちの姿「頬突き」から』『ほほ(カメムシの仲間)と呼ばれる虫がつくから』がある。食用になるホオズキもあるが、一般的に栽培されているホオズキは昔に堕胎剤として使われていた背景があり、食べることはできない。

くぬぎ

ブナ科コナラ属の落葉広葉樹。樹液には匂いがあり、その匂いは強烈で遠くまで匂いがとどくだけでなく、クヌギのある雑木林や里山ではまるで、お酒のような発酵した匂いのすることがあるほど。アベマキと非常によく似ており、交雑するものもあり「アベクヌギ」と呼ばれる。

シロシキブ

紫の実が鮮やかなムラサキシキブの変種の白実種

あやめ

名前の由来は、「花びらに網目の模様があった」ことから、文目(あやめ)と呼ばれるようになったと言われている。同じ漢字のショウブ(菖蒲)はサトイモ科で、アヤメ科のあやめとは違う。また、水辺に群生するショウブに対し、あやめは畑や草原など乾燥した場所に群生する。

クリ

クリは黒い実、つまりクロミの意味。栗とは区別され、栗は中国産のクリで、日本の山に自生するクリとは別種である。日本産のクリはシバグリ、ニホングリとも呼ばれる。葉は細長く、ふちには先が針のようにとがった鋸歯がある。総苞という入れものの外側には針がたくさん生え、クリの果実が熟すとイガになる。里山の雑木林に生える。

ヤブミョウガ

一般的に知られるミョウガ(中国原産の食用植物)とは違い、ヤブミョウガは関東以南の里山に生える野草。ヤブミョウガは食用に適さないと言われているが、その名の通り葉や茎はミョウガに似た香りと香味を持ち合わせることから、ミョウガの代用品として古くは珍重された。若芽を天ぷらやおひたし・冷やっこの薬味などにして食べる風習が残る地区もある。地下茎は漢方薬となり、頭痛に効くという。

バラの実

ローズヒップはバラの実全般を指す名称。お茶やお菓子の材料に用いられるのが一般的。バラの実は正確にいうと果実ではなく、植物学上は「偽果(ぎか)」と呼ばれている。バラの実は、すべての種類のバラにつくものではなく、「ワイルドローズ」と呼ばれる原種バラにつく。古くから食用や薬用として用いられており、古代ローマ時代には狂犬病に効くと信じられ、実際に用いられていた記録が残されている。

ヘクソカズラ

葉を揉むと、不快なカメムシのような悪臭があることから、屁、糞の字を当てた「屁糞葛(ヘクソカズラ)」と名づけられた。実にも悪臭があるがその果汁は、しもやけなどに効能があるとされ、ハンドクリームに混ぜるなどして使われる。蔓にも同様の効能がある。一方で、花が可愛らしいことからサオトメカズラ(早乙女葛)、花の真ん中がお灸をすえた後の様に丸く赤くなることからヤイトバナ(灸花)の別名もある。蔓は丈夫で長持ちし、昔はこれを紐代わりとして薪などを縛るのに用いた。

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